ライブゲームとトーナメント、戦略の違いについて。

ライブゲームとトーナメント、用いる戦略の違い(2)

1.ライブゲームの目的心理と戦略 ≫ 2.トーナメントの目的心理と戦略

トーナメントの目的心理と戦略

トーナメントの目的は、参加プレーヤーの中でより上位の結果を残すことです。
さらに具体的に言うと、最悪でもインザマネー(賞金を得られる入賞ライン)の結果を残す事が第一の目的になります。
トーナメントはライブゲームと違い、結果を残すために使える時間は「プレーヤーのチップがなくなるまで」と決められています。
チップがなくなった時点で、そのプレーヤーはトーナメントの敗者となります。
またトーナメントではブラインド額(最低賭け金)が時間の経過と共に上昇するため、勝負どころを悠長に待っているわけには行きません。
ブラインド額が所持するチップ量に迫るにつれ、プレーヤーの選択できるアクションの幅はどんどん狭まってきます。
そしてチップ量がブラインド額に抜かれた時点で、そのプレーヤーの選択できるアクションはオールインコールのみとなります。
そうなる前に、プレーヤーは上昇するブラインド額よりも速く、手元のチップを増やしていく必要があります。
「今日は負けても、明日取り返せばいいや。」というわけにはいかないのです。
結論から言うと、トーナメントのプレーヤーには次の2点が求められます。

・最悪でもインザマネーに入るまではチップを全て失ってはならない。
・ブラインドの上昇速度よりも速く手元のチップを増やす。

この2点を同時に行うことは、ある意味理不尽な戦略と言えます。
なぜならチップを失わないためにはより慎重な戦略が必要ですが、慎重にプレーするだけでは、インザマネーに入る前にブラインド額が自分のチップ量を超えてしまうからです。
どちらの要素を重要視するかはプレーヤーによって異なりますが、トーナメントではこの二つの要素が全てのプレーヤーの心理に入り混じります。
そのため、その心理をついた戦略こそがトーナメントの有効な戦略となります。

トーナメントの戦術として代表的なものにブラインドスティールがあります。
これはプリフロップで賭け金を吊り上げることで、他のプレーヤーを全員ゲームからドロップアウトさせ、ブラインドとして出されたチップを獲得するという戦術です。
他のプレーヤーはチップを大きく失いたくないという心理により、よほど強い手札を持っていない限りその勝負には乗ってきません。
この戦術を使い、ブラインドを定期的に獲得する事ができれば、あなたのチップ量はブラインドに抜かれることはありません。
ブラインドの上昇速度よりも速くチップを増やす事ができます。
これはプレーヤーが意識する二つの要素のうち「上位に入るまではチップを失いたくない」という相手の心理をついた戦術と言えます。

一方さらに高度な戦術として、ブラインドスティールに対するスティールがあります。
これはブラインドスティールを狙って賭け金を吊り上げたプレーヤーに対し、さらに賭け金を吊り上げることでゲームからドロップアウトさせ、そのプレーヤーの吊り上げた賭け金をも獲得するという戦術です。
これは相手プレーヤーに混在する二つの心理を、両方とも利用した戦術と言えます。
しかしこの戦術は難易度が高く、あなたのリレイズで相手がゲームを降りるかどうかを様々な側面から判断しなければなりません。
もし失敗した場合に失うチップ量を、その後リカバーできるか?という点を視野に入れる必要もあるでしょう。

このような判断を行う思考力こそが、一流プレーヤーとそうでないプレーヤーの思考力の差と言えます。
大切なのは、一流プレーヤーのアクションには逆算すると様々な思考が含まれているということです。
その思考を知らずにアクションだけを真似ても、それはイチローの振り子打法を真似する少年野球とかわりません。

トーナメントでは限られた時間とチップ量の中で争われるため、心理的な駆け引きがライブゲームより多く必要とされます。
実際にはここで採り上げたこと以外にも様々な戦略要素があり、それらを用いた戦術はライブゲームのそれとは異なります。
なぜ異なるかは、ここまで読んでいただいた方なら分りますよね。
もちろんその理由は、プレーヤーの持つ目的心理がライブゲームとは異なるからです。

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